この記事は、楽天証券主催の『【ライブ配信】広瀬隆雄氏オンラインセミナー(2月26日開催)』を基に作成しています。
まとめ
今回2月末にかけて株価が下落する要因となっているのは、長期金利(米国10年債利回り)の上昇。
一時的に1.6%まで上昇した。
金利が勢いよく上昇している時は、ハイパーグロース株(テレワーク銘柄など)やテーマ株(宇宙、クリーンエネルギーなど)は売られやすい。
長期金利の上昇が落ち着いて、グッと下げてから買い出動するべき。それまでは何もせず待機。
債券投資家と株式投資家の考え方は大きく違う。
債券投資家は数字にうるさいが、株式投資家はドリーマー(夢見ている)。
債券投資家の思考回路はこうなっている。
『景気が良くなる→インフレ→債権のリターンが不十分→債権を売ろう』
今回の下落で米国株がもう終わりというわけではない。
長期金利が下がれば、慎重に、少しずつ買い出動してよい。
米国経済の現況
新型コロナワクチンの接種が順調に進んでおり、景況感が好転した。
長期金利も上昇してきている。
そのため、FRBは市場に対するメッセージを変更する必要が出ている。
失業率はコロナで急上昇したあと、6.3%まで急回復している。
しかし、コロナ前の水準と比べると、未だに1,000万人ぐらいの雇用は失われたまま。
この雇用が回復するまでは、FRBは金融緩和を継続しなければならない。
ただし、前回のリーマンショックの時と比較すると、今回は失業率の回復ペースがはるかに早い。
そのため、金融緩和政策も前よりも早く変更しないといけないと考えられる。
投資ストラテジー
グロース株は金利上昇に弱いため、どこかある時点で、旅行・レジャーなど『リア充』銘柄を買うとよい。
また、長期金利が上昇するという状況は、銀行経営にはおいしい環境であるため銀行株も良い。
他には、景気が強く、金利も上昇する局面では、経験則的に、工業・素材株も良い。
推奨銘柄
デルタ・エアラインズ($DAL)
- 売上高で世界最大の航空会社
- 2019年実績で2億人が利用
- 信頼されているブランド
- 新型コロナ前は1日5千回離陸
- 売上高の7割が米国内
- アトランタ、ミネアポリス、デトロイト、ソルトレイクシティのハブ空港に加え、ボストン、ロサンゼルス、ニューヨーク、シアトルに強い。海外ではアムステルダム、ロンドン、メキシコシティ、パリ、ソウルに強い
- 「スカイマイル」マイレージプログラム
- 強固なバランスシート
- 自社所有507機、リース153機、駐機90機
- 平均機齢13.5年
- 有効座席マイルあたり総収入(TRASM)11.87セント(前年16.97セント)
今は業績がボロボロで、ワクチンが普及するまでは、しばらくこれが続くと思われる。
しかし、半年~1年これが続いてもデルタはつぶれない。
また、航空業界が復活するときは、国内旅行からと言われている。(半年後ぐらい?)
ワクチンの接種状況が国により違うため、海外旅行はすぐには復活しない。
そのため、国内売り上げが大きいデルタには有利。
マリオット($MAR)
- 世界で7,642物件、142.3万室のホテルやレジデンスを運営するホテルブランドのフランチャイザー&オペレーター
- 「リッツカールトン」、「セントレジス」、「Wホテルズ」、「JWマリオット」、「エディション」、「ラグジュアリー・コネクション」、「シェラトン」、「ウエスティン」、「メリディアン」、「ルネッサンス」、「コートヤード」、「フォーポインツ」、「アロフト」、「モクシー」などのブランドを展開
- 「マリオット・ボンボイ(Marriott Bonvoy)」カスタマー・ロイヤリティー・プログラムを展開
- 大部分はフランチャイズによる「持たない経営」
顧客の好みに合わせて多数のブランドを展開しているが、「マリオット・ボンボイ」は全てのブランド共通で使用することができる(ポイントが貯まりやすい)。
集客やロイヤリティー・プログラムはスケール(規模)がモノを言うため。
マリオットの売上構成は5つに分かれる。
コンサルティングによる「マネージメントフィー」、「フランチャイズフィー」、「インセンティブフィー」の3つ
ホテル経営による「自社所有物件売上高」
実費精算による「コスト・リインバースメント」
「コスト・リインバースメント」とは、マリオットがオーナーの代わりにホテルを運営するが、費用が発生すれば右から左にオーナーに請求する形でオーナーに請求し、マリオットは対価をもらうというもの。
この項目は、売上高がコロナの影響でガクッと落ちても、コストも下がるという収入構造になっているので、赤字幅が小さくなる。
マリオットの経営は世界のホテルが見本にしている。
ウエルズファーゴ($WFC)
- 2018年以降FRBから総量規制を受けているので、資産、売上高は伸びていない(2020年売上高732億ドル)
- 総資産 1.94 兆ドル、総預金 1.37 兆ドル、総融資 0.94 兆ドル
- 株主資本利益率(ROA)0.17%
- 有形自己資本利益率(ROTCE)1.3%
- 純金利マージン 2.27%
- ネット・チャージオフ・レシオ 0.26%
かつては時価総額ベースで全米最大の銀行。
2017年ごろに架空口座を開設しまくったというスキャンダルが発覚した。
ゴリゴリ営業成績を追求するウエルズファーゴの営業姿勢が問題になった。
そして、これ以上営業拡大してはいけないということで総量規制を受けたので、売上高は鳴かず飛ばず。
ガバナンス・コンプライアンスに関して徹底的に行政指導が入った。
チャールズ・シュワブという新しいCEOが1年半ほど前に外部からきて、経営改革に取り組んでいる。
今年のどこかで、FRBの許しが出て、総量規制が解除されるのではないかと言われている。
商業銀行であれば、ROAは普通は1%ぐらい、ROTCEは15%ぐらい。
だから、ウエルズファーゴは全然儲かっていない。
本来、ウエルズファーゴはアメリカで誰もが知るベストブランド、ピッカピカの銀行。
ブランド大好きのバフェットが最も愛してきた銀行がウエルズファーゴ。
注目ポイントの1つは、長短金利差が拡大してきていること。
調達金利(FFレート)と貸付金利(長期金利)の金利差(純金利マージン)の拡大が見込めるので、ウエルズファーゴは何もしなくても業績が改善していく。
ニュートリエン($NTR)
- 世界最大級の肥料の会社:苛性カリ(根菜類)、窒素(葉菜類)、リン酸(果菜類)
- 米国穀物在庫は低水準
- 穀物価格は堅調
- 2021年は作付面積拡大が期待される
- 中国ではアフリカ豚熱ウイルスで豚を大量殺処分後、養豚産業の立て直しが始まっている=普段より多くの肥料が必要
ニュートリエンは、3大肥料(苛性カリ、窒素、リン酸)の全てをやっている。
カナダに大きな苛性カリの石切り場を持っている。山全体が岩塩みたいな。
だからスケールビジネス。コスト競争力は世界でもトップクラス。
窒素はカナダだけでなくアメリカ全土に拡大している。
リン酸も展開しているが、比率では最も小さい。
ニュートリエンにとって重要な商品ラインは、苛性カリと窒素の2つ。
今、世界の穀物市況は強い。
穀物のストックは世界的に低い水準にある。
だから各国は有事のために穀物の備蓄を増やした方が良いと考えていて、そのインセンティブが高い。
これが需要増、価格増につながっている。
豚の餌は、トウモロコシや大豆。
とりわけ大豆の栽培には苛性カリが必要で、需要増につながっていく。
ゼネラル・エレクトリック($GE)
- ジェットエンジン、医療機器、ガスタービン、風力発電
- 航空会社の業績回復、ボーイング 737 Max の納機開始
- ガスタービン事業はようやく底打ち
- 風力発電はバイデン政権で追い風
2年前は火力発電所に納入するガスタービンのビジネスがうまくいかないことで売られた。
去年はコロナでジェットエンジンビジネスがうまくいかないことで売られた。
さらに、ボーイング 737 Max の問題で、ジェットエンジンの納品もストップした。
737 Max の納期が開始したことと、ワクチン接種が普及したことでようやく業績が回復していきそう。
ジェットエンジンビジネスはドル箱ビジネスなので、ここの落ち込みはGEにとっては痛かった。
ジェットエンジンビジネスはGEの他に、イギリスのロールスロイス、レイセオン・テクノロジーのプラット&ホイットニーの3社が独占している。
ガスタービンのビジネスに関しては、電力会社が小さくて効率の良いタービンを求めていたが、GEは一回り大きなタービンを開発したため売りあぐねて苦労していた。
しかし、電力会社タービンをケチって小さいものを採用したことが裏目に出て、今テキサスでは大寒波により4日間停電が起きている。
→つまり、GEの大きなタービンは正しかったということ。これからこのビジネスも上向くと思われる。
今ソーラー発電に注目されているが、風力発電にも光が当たるかもしれない。
医療機器は成長していないが、キャッシュフローが潤沢なビジネス。
今回のGEの決算では、営業キャッシュフローが良かったこともポイント。
質疑応答
今、アメリカの銀行が直面している問題について
銀行のバランスシートを見ると、預金がかなり増えていて、アセットクオリティは全く問題ない。
アセットクオリティというのは、住宅ローンとかクレジットカードで貸したお金が返ってくるかということ。
問題なのは、貸付キャパシティが余り過ぎていて、お金を借りたいという人がいないこと。
ワクチンが普及して来れば、レストランが営業再開するための資金が必要になってくる。
そうすると、貸付需要が増えるので、銀行株にとっては良い環境になる。
ハワイアン・ホールディングス($HA)について
ハワイアン・ホールディングスはハワイアン・エアラインという航空会社を所有している。
ハワイはコロナで苦しんでいる。
飛行機が戻ってこないと、ハワイは復活しないということで希望を託されている。
経営陣は積極経営で好感が持てる。
ひょっとすると化けるかもしれない銘柄。
カーニバル($CCL)について
カーニバルはマリオットとは反対の「持つ経営」である。
そのため、営業できない1日1日が赤字の垂れ流しである。
その分営業再開すれば、アップサイドは最も大きいので博打は打てる。
カーニバルはパナマ籍の会社で節税対策をしていた。
そのため、コロナ下でアメリカ政府がリア充ビジネスの企業に対して資金援助をした中で、カーニバルだけは援助してもらえなかった。
カーニバルは仕方なく、「At The Market Offering(ATM)」で資金調達をすることになった。(2回にわたって500億ドル以上)
これは場で投資家の買い注文に対して、企業が新株を売り浴びせるという良くない方法。
この方法では、いつATMが終わるのかわからないというグダグダの状態だった。
先日、このやり方ではダメだということでゴールドマンサックスが公募増資を引き受けた。
そして、その公募価格よりも上に来たことで、ようやく区切りがついた。
クルーズは今年の8月、9月には復活できないと思う。
カリブ海クルーズはアメリカの冬がハイシーズン。
12月、1月に間に合うかがカギになる。
そこまでしのげるかが戦いになる。
ロケット・カンパニーズ($RKT)について
今回の決算は良かった。
EPS:予想 0.88ドルに対して、1.14ドル
売上高:予想 39.6 億ドルに対して、47 億ドル
売上高成長率:前年同期比+143.7%
ローン・オリジネーションは、1,072 億ドル(前年同期比+111%)。
来期のガイダンスはローンボリュームで出されている。
レンジで980~1,080億ドル。
今期の実績よりもわずかに控えめな数字になっているが、前年同期比では+90~99%成長。
今、長期金利がグッと上がっていて、住宅ローン会社は瞬間的に嫌気されるビジネスだが、足元の業績はしっかりと出ているので全く心配していない。