【決算】宇宙関連銘柄2社を比較【LMT】【NOC】

決算レビュー

今回ピックアップする2社は、ロッキード・マーチン($LMT)、ノースロップ・グラマン($NOC)です。

ロッキード・マーチンとノースロップ・グラマンの2銘柄は、ARKが『ARK Space Exploration ETF(ARKX)』を上場すると発表したことで、宇宙関連銘柄として注目されています。(SECに提出した申請書類はこちら

ちなみに、じっちゃまが特に注目しているのは『ノースロップ・グラマン』です。(→詳細はこちらの記事参照)

直近の決算発表(Q4/2020)

まずは、直近の各社の決算発表からチェックしていきます。

ロッキード・マーチン

2021/1/26に発表された、ロッキード・マーチンの2020年第4四半期の決算資料はこちらです。

Q4 の結果は以下の通りでした。

売上高:$17 billion vs コンセンサス予想:$16.92 billion ⇒Beat
EPS:$6.38 vs コンセンサス予想:$6.41 ⇒Missed

Full year の結果は以下の通りでした。

売上高:$65.4 billion vs コンセンサス予想:$65.27 billion ⇒Beat
EPS:$24.3 vs コンセンサス予想:$24.5 ⇒Missed

ガイダンスは以下の通りでした。

Full year 2021
売上高:$67.1-$68.5 billion vs コンセンサス予想:$68.04 billion ⇒Missed
EPS:$26.0-$26.3 vs コンセンサス予想:$26.17 ⇒Missed

ロッキード・マーチンは、2020年12月20日に、エアロジェット・ロケットダインを44億ドルで買収することで合意したことを発表しました。
この取引は2021年後半に成立する予定です。
ただし、この買収成立には規制当局の承認やエアロジェット・ロケットダイン株主の承認が必要になります。

エアロジェット・ロケットダイン(Aerojet Rocketdyne)は、衛星やミサイルなどの高度な推進器を開発・製造している会社です。
顧客には、アメリカ防衛省やNASAなどがいます。
ロッキード・マーチンも以前からエアロジェット・ロケットダインの製品を導入していました。

ノースロップ・グラマン

2021/1/28に発表された、ノースロップ・グラマンの2020年第4四半期の決算資料はこちらです。

Q4 の結果は以下の通りでした。

売上高:$10.2 billion vs コンセンサス予想:$9.27 billion ⇒Beat
EPS:$6.59 vs コンセンサス予想:$5.77 ⇒Beat

Full year の結果は以下の通りでした。

売上高:$36.8 billion vs コンセンサス予想:$35.85 billion ⇒Beat
EPS:$23.65 vs コンセンサス予想:$22.79 ⇒Beat

ガイダンスは以下の通りでした。

Full year 2021
売上高:$35.1-$35.5 billion vs コンセンサス予想:$37.45 billion ⇒Missed
EPS:$23.15-$23.65 vs コンセンサス予想:$24.19 ⇒Missed

宇宙事業比較

各社の宇宙事業の売上高、営業利益は以下のグラフの通りです。
詳細は後述しますが、2020年の売上高ではロッキード・マーチンの方が大きいですが、売上高成長率・営業マージンはノースロップ・グラマンの方が高いです。

各社決算発表資料を基に作成
各社決算発表資料を基に作成

事業内容

業績を見る前に、それぞれの宇宙事業の内容をざっと把握したいと思います。
(内容が難しく、うまく説明できておらず申し訳ありません。)

ロッキード・マーチン

ロッキード・マーチンの宇宙事業は大きく3つに分けられています。

ロッキード・マーチンの宇宙事業
  • Connect
    • 通信衛星技術の開発(スマホのように操作できる通信衛星)
    • 太陽電池アレイ
    • 新LTE技術の開発(携帯電波が届かない場所や自然災害発生時に4G回線を利用し、既存の携帯電話を衛星に直接つなぐ技術)
    • 宇宙コンピューティング技術の開発(AI、データアナリティクス、クラウドネットワーキングなど)
    • 衛星映像認識システムの開発
    • などなど
  • Protect
    • ミサイル防衛システムの開発
    • GPS技術の開発
    • 極超音速技術の開発(30分間で極超音速機は2万キロ移動可能。戦闘機でも2,400キロぐらい。)
    • バス機器・ペイロードの製作
    • などなど
  • Explore
    • エアロシェル(大気圏突入時に熱などから機体を守るもの)の製作
    • 軌道衛星・宇宙船の製作
      • NASAのアルテミス計画で宇宙船オリオンを製作
    • 着陸船の製作
    • などなど

ノースロップ・グラマン

ノースロップ・グラマンの宇宙事業は6つの部門に分かれています。

ノースロップ・グラマンの宇宙事業
  • Global Security
    • 新たな大陸間弾道ミサイルの開発
    • ミサイル防御システムの開発
  • Launch Vehicles and Propulsion Systems
    • 固体ロケット推進システム・製品の開発
      • NASAの宇宙発射システム(SLS)用の5つの推進器を提供
      • オリオン乗組員輸送機の発射中止システム(LAS)用のメイン発射中止モーターを提供
  • Human Spaceflight and Logistics
    • 宇宙飛行士への必要物資の供給する宇宙船Cygnusの製作
    • NASAの月面探査に使用される月軌道ゲートウェイの居住・運搬基地(HALO)モジュールのデザインと製作
    • 衛星の寿命を延ばすために必要な推進力と姿勢制御を提供
  • Commercial Satellites
    • 最も売れている小型および中型の通信衛星GEOStarを提供
  • Earth and Space Science
    • 気象衛星に使用される高度マイクロ波測定技術の開発
    • 地球観察システムAquaの開発
    • 月面のクレーター観察・感知システムの開発
    • などなど
  • Space Components and Payloads
    • ハッブル宇宙望遠鏡などの重要な部品となっている精密光学部品
    • 太陽電池アレイシステムの設計・開発・生産
    • ロケット推進剤タンクの生産

業績

ロッキード・マーチン ー Space 事業

  • Q4
    • 売上高:32.4億ドル(前年比+14%)
       ⇒宇宙事業売上高が全売上高に占める割合:19%
    • 営業利益:3.7億ドル(前年比+42%)
    • 営業マージン:11.4%
  • 通期
    • 売上高:118.8億ドル(前年比+9%)
       ⇒宇宙事業売上高が全売上高に占める割合:18%
    • 営業利益:11.5億ドル(前年比-4%)
    • 営業マージン:9.7%
  • 2021通期ガイダンス
    • 売上高:118.75~121.75億ドル
    • 営業利益:11.2~11.5億ドル

Q4、通期ともに売上高が増加した要因は2つ。
● 政府の衛星プログラム(主にNext Gen OPIRなど)の売上高増加
● 戦略・ミサイル防衛プログラム(主に超音速技術開発)の売上高増加

ノースロップ・グラマン ー Space Systems 事業

  • Q4
    • 売上高:25.5億ドル(前年比+31%)
       ⇒宇宙事業売上高が全売上高に占める割合:25%
    • 営業利益:2.6億ドル(前年比+17%)
    • 営業マージン:10.1%
  • 通期
    • 売上高:87.4億ドル(前年比+18%)
       ⇒宇宙事業売上高が全売上高に占める割合:24%
    • 営業利益:8.9億ドル(前年比+12%)
    • 営業マージン:10.2%
  • 2021通期ガイダンス
    • 売上高:90億ドル代後半
    • 営業マージン:~10%

Q4、通期ともに売上高が増加した要因は、宇宙および発射・戦略ミサイル事業分野の2つ売上高が増加したこと。
● 宇宙事業:NASAのアルテミス計画およびアメリカ空軍のNext Gen OPIR計画の増加
● 発射・戦略ミサイル事業:GBSD計画の立ち上げと商用電源サービス計画の増加

宇宙事業に関するまとめ

まず、事業内容に関しては専門的な内容で理解するのが難しかったです。
印象としては、ロッキード・マーチンの方が大きなもの(宇宙船など)をつくり、ノースロップ・グラマンはそれに使用される細かな部品などをつくっているイメージです。
(間違えていたらすみません。)

どちらもNASAのアルテミス計画に参加しており、ARK宇宙探査ETFには必ず組み込まれるだろうと思われます。

次に業績ですが、(個人的には今回調べてみて驚いたのですが、)2社ともしっかりと売上高・営業利益を出していました。
特にノースロップ・グラマンは、通期売上高が前年比で18%も伸びているのは魅力的で、2021年通期のガイダンスでも売上高は10%以上の成長を予想しています。

参考

Next Gen OPIR計画

参考資料

Next Generation Overhead Persistent Infrared (Next Gen OPIR) Block 0 program とは、2018年にアメリカ空軍によって発表された、静止軌道上の新しいミサイル警告衛星をつくる計画のこと。

宇宙船の元請け企業であるロッキード・マーチンは、ペイロードの設計に関して、レイセオンとノースロップ・グラマン/ボール・エアロスペースの2組を最終候補に残していましたが、最終的にノースロップ・グラマンとボール・エアロスペースの設計したペイロードを採用することが発表されました。

アルテミス計画

アルテミス計画とは、2024年までに最初の女性および次の男性を月面着陸させる計画のこと。
2028年までに、NASAは民間企業や国際パートナーと協力し、持続可能な計画を確立する。
そして、月面調査で得られた知識を糧に、その次は火星に宇宙飛行士を送り届ける計画。

アルテミス計画のパートナー企業(一部)

  • オリオン宇宙船:ロッキード・マーチン
  • SLSロケット:エアロジェット・ロケットダイン
  • 月軌道ゲートウェイ
    • 有人モジュール(HALO):ノースロップ・グラマン
    • 電力・推進装置(PPE):マクサー・テクノロジーズ($MAXR)
  • 有人着陸船(HLS):ブルー・オリジン(を主としたロッキード・マーチン/ノースロップ・グラマン/ドレイパー連合チーム)、ダイナミクス、スペースX

GBSD(地上配備型戦略抑止力)計画

参考資料

GBSD(地上配備型戦略抑止力)計画とは、アメリカ国防総省が進めている大陸間弾道ミサイル(ICBM)を新しいミサイルに入れ替えるプログラムのことです。

2020年9月8日に、ノースロップ・グラマンはアメリカ空軍から採用されたことを発表しました。
技術開発・製造費用として契約金は133億ドルにも及びます。
ミサイルは2029年には配備される予定です。